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大阪地方裁判所 平成9年(ワ)640号 判決

大阪市北区本庄西三丁目九番三号

原告

株式会社ニッショー

右代表者代表取締役

佐野實

右訴訟代理人弁護士

小野昌延

小松陽一郎

池下利男

右訴訟復代理人弁護士

村田秀人

大阪府箕面市半町四丁目三番四〇号

被告

有限会社ニッショー家具

右代表者代表取締役

山下政也

主文

一  被告は、別紙目録二及び三記載の場所において使用するその営業活動又は営業設備の表示から「ニッショー」の表示を抹消せよ。

二  被告は、大阪法務局池田出張所平成八年二月二〇日付本店移転登記のうち「有限会社ニッショー家具」なる商号の抹消登記手続をせよ。

三  訴訟費用は被告の負担とする。

四  この判決の第一項は、仮に執行することができる。

事実及び理由

一  原告は、主文と同旨の判決及び仮執行の宣言を求め、別紙のとおり請求の原因を述べた。

二  被告は、適式の呼出しを受けたにもかかわらず、本件口頭弁論期日に出頭しないし、答弁書その他の準備書面を提出しないから、請求原因事実を明らかに争わないものと認め、これを自白したものとみなす。

三  以上によれば、原告の請求は理由があるから認容し、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 水野武 裁判官 田中俊次 裁判官 小出啓子)

請求の原因

一、原告の周知・著名営業表示

1、原告は、昭和二三年七月に設立された大証及び東証一部上場企業であるが、その事業内容の一つとしてスーパーマーケットを多数経営しており、食料品類等と共に家具類の販売も行なってきている。

2、原告の右スーパーマーケット(以下「本件各店舗」という。)には、いずれも「ニッショー」、「ニッショーストア」、「スーパーストアニッショー」の営業表示(以下「本件営業表示」という。)を看板その他の広告物等に表示してきている。

そして、本件営業表示の付されている本件各店舗の開設状況は次のとおりである。

(1)昭和三八年一一月、豊中市服部(服部店)

(2)昭和四一年五月、豊中市新千里東町(千里東店)

(3)昭和四二年四月、池田市呉服町(池田店)

(4)昭和四五年六月、池田市石橋(石橋店)

(5)昭和四九年三月、宝塚市南口(宝塚南口店)

(6)昭和五〇年三月、吹田市千里山東一丁目(関大前店)

(7)昭和五〇年一〇月、茨木市西中条町(茨木駅前店)

(8)昭和五一年一一月、茨木市東奈良(南茨木店)

(9)昭和五二年七月、京都市上京区千本通(千本店)

(10)昭和五二年一二月、豊中市岡上ノ町(豊中店)

(11)昭和五三年七月、茨木市竹橋町(茨木店)

(12)昭和五四年三月、神戸市灘区水道筋(水道筋店)

(13)昭和五四年五月、尼崎市東園田町(園田店)

(14)昭和五四年八月、国鉄高槻駅前(高槻店)

(15)昭和五七年三月、茨木市橋の内(総持寺店)

(16)昭和五七年八月、京都市左京区一乗寺(白川通店)

(17)昭和五九年八月、豊中市北条町(小曽根店)

(18)昭和六一年八月、吹田市五月ケ丘南(五月が丘店)

(19)平成一年五月、寝屋川市対馬江東町(寝屋川店)

(20)平成一年八月、枚方市楠葉並木(くずは店)

(21)平成一年八月、大阪市淀川区三国本町(三国店)

(22)平成三年四月、姫路市東郷町(姫路店)

(23)平成四年一〇月、摂津市千里丘(千里丘店)

(24)平成六年九月、兵庫県川西市見野(山下店)

右本件各店舗のうち、(5)、(9)、(12)、(13)、(16)、(22)、(24)を除く合計一七店舗は、大阪府北部に集中している。

3、本件各店舗における大阪府下の売上状況の推移(一部)は次のとおりである。

(1)昭和五五年 合計一四、一一〇、二二九、〇〇〇円

(2)昭和五六年 合計一四、七二〇、八八一、〇〇〇円

(3)昭和五七年 合計一五、五五一、九三八、〇〇〇円

(4)昭和五八年度 (一月から翌年三月まで。)

合計一九、九九四、三五一、〇〇〇円

(5)昭和五九年度 (四月から翌年三月まで。以下同じ。)

合計一六、九〇三、三九四、〇〇〇円

(6)昭和六〇年度 合計一七、二一八、二二七、〇〇〇円

(7)昭和六一年度 合計一七、七〇七、〇八四、〇〇〇円

(8)昭和六二年度 合計一九、七〇九、二五三、〇〇〇円

(9)昭和六三年度 合計二〇、四五六、〇七五、〇〇〇円

(10)平成元年度 合計二三、〇一一、〇七四、〇〇〇円

(11)平成二年度 合計二七、四二二、八九二、〇〇〇円

(12)平成三年度 合計三〇、四八六、七一三、〇〇〇円

(13)平成四年度 合計三三、六三九、七六四、〇〇〇円

(14)平成五年度 合計三三、一二七、八二八、〇〇〇円

(15)平成六年度 合計三二、三二七、四九四、〇〇〇円

4、原告は、本件営業表示を含む広告宣伝を多大な費用をかけて行なってきた。

(1)、最近のデータであるが、平成六年度の広告宣伝費は総額約一二億円、平成七年度のメディア関係のみの広告宣伝費の予算は約八億三五〇〇万円である。

(2)、本件各店舗では大手新聞紙への折り込みチラシを多量かつ日常的に行なっている。

(3)、原告のスーパーマーケットについては、新聞や雑誌等でたびたび紹介されている。

(4)、また、原告のイメージ広告的なテレビコマーシャルは特に有名である。新聞広告もたびたび行なっている。

5、原告の事業全体の売上は、ここ数年は年間一、〇〇〇億円を超えており、そのうちストア部門の売上比率は約四二%である。

6、以上から、本件営業表示はスーパーマーケットの部門で遅くとも昭和六〇年以降、少なくとも大阪府北部及びその隣接地域すなわち大阪府豊中市、同箕面市、同池田市、同吹田市、同茨木市、同高槻市、同枚方市、同摂津市、兵庫県宝塚市、同川西市において周知性を獲得していることは明らかであり、原告の「ニッショー」の表示自体は著名性も獲得している。

二、被告の営業表示及び登記

被告は、平成八年二月五日に商号を「有限会社奈良三菱家具」から「有限会社ニッショー家具」に変更し、同月一五日本店を奈良市から大阪府箕面市に移転し、同月二〇日に本店移転の登記を行った。さらに、被告は被告代表者個人と共に、仏壇・家具・唐木等を販売し、訴状肩書地において、別紙目録二、三記載の営業表示を行なっている。

三、両営業表示の同一・類似性等

1、原告の本件営業表示の「ニッショー」の文字は、別紙目録一のとおりである。

2、被告の営業表示は別紙二、三のとおりである。

3、両営業表示の「ニッショー」の部分は、称呼は同一であり、外観については、書体自体も同一である。そして、本件営業表示のうち「ニッショーストア」、「スーパーストアニッショー」の要部は「ニッショー」にあり、被告の営業表示の「ニッショー」の部分は他の表示と独立している。

したがって、両営業表示は同一又はその要部において同一である。

4、原告は本件各店舗で食料品類等と共に日用雑貨や家具類もその一部で販売している。したがって被告の前記営業内容と一部が共通し、少なくとも広義の混同が生じている。

また、本件営業表示のうち、「ニッショー」の部分は著名ですらあるから、この場合は、営業の混同の事実は考慮する必要はない。

四、被告商号登記と本件営業表示との類似性

1、被告商号登記「有限会社ニッショー家具」の表示のうち、「有限会社」の部分は単に会社の種類を示すものに過ぎず、「家具」の部分も識別力のある表示ではないから、右被告商号登記の主要部分が「ニッショー」にあることは明らかである。したがって、右被告商号登記は原告の本件営業表示の「ニッショー」の部分が共通しているから、両表示は類似する。

そして、営業の混同の事実については、前項4、と同一である。

2、なお、被告は、被告代表者に対する原告からの別訴(大阪地方裁判所平成七年(ワ)第一三、二七三号)が提起された後に右商号登記手続を行なっているので、「不正競争の目的をもって」右登記をなしたことは明らかである。

五、総括

よって、原告は、被告に対し、不正競争防止法二条一項一号(予備的に同二号)三条に基づき(なお、請求の趣旨第二項については、商法二〇条一項も併せ主張する)、請求の趣旨記載の判決を求める。

目録

一、別紙表示のとおり。

二、所在 大阪府箕面市半町四丁目三番四〇号

別紙写真1の建物の入口上部及び壁面に付されている「ニッショー」の表示

三、所在 右同所付近

別紙写真1、2の立看板下部に付されている「ニッショー」の表示

〈省略〉

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